新たな出会いのために


新しい季節を迎えて、入学式や入社式。卒業や退社など。
新年度は出会いと別れの季節です。
今まで経験のなかったことへの挑戦をする時期かもしれません。

また、年齢と経験と共に人生の立場も変わることで、強制的に変わることもあります。
部下を持つことや、学年が上がること、責任者になることや昇進。
新しい土地への転勤。

その出会いの陰には必ずお別れがあります。
例えば、結婚によって、独身の自分へとのお別れ。
出産によって親になること。
親になることや子育てが終わることでの役割とのお別れ。
定年退職によって立場の変化。引っ越しでの今までの環境とのお別れ。
年を取ることでの能力の低下。
死別や病気も健康との決別になるかもしれません。

新しいものと出会うためには、過去のものとお別れをしていく必要があります。
そのお別れがうまくいかないと、その人が意識しない部分で影響が出ることがあります。

ある方は、大好きだった仕事をでしたが、新たな挑戦のために退社したそうです。
会社には残ることを勧められたけど、そこは人生の挑戦として新たな仕事を始めて、現在は以前の仕事よりも収入や責任の面でやりがいを感じて、不満はないのに何かもやもやしているものが残っていたそうです。
お話を聞いていくと、前の会社は好きだったけど、自分の意志でやめたので、そこを「やめた悲しさ」を感じないようにしていたそうです。

もう一人の方は結婚を考えているパートナーがいるのですが、何か踏み切れるものがなく。周りからは結婚を勧められても決断ができない方でした。
その方の場合は前のパートナーとのお別れがうまくできていなかったそうです。
この方は前のパートナーとのお別れが済んだ時点で、現在のパートナーの良さがさらにわかり、好きという気持ちがさらに深くなったそうです。

お別れがうまくいっていないことで、心理的な防衛が働き忘れてしまったりしますが、影響は本人が気づかないところで出たりします。
恋愛がパートナーシップに影響を与える点では私も気づいた点がありました。

中学生のころ、初めて好意を持った相手がいました。
その相手のことを親に話した記憶はなかったのですが、ある時の食事中に「あの子とは付き合ってはいけない」と急に父親に言われました。
食事中に家族の前で言われたこともショックでしたし、自分の気持ちを知られていたことも恥ずかしかった記憶があります。

親に言われたことなので「その子」との関係は自然と離れていきますが、
その後、本音を親に知られないように話すこともなくなりましたし、
恋愛感情を持たないように「恋愛は脳内ホルモンの異常」「人間関係は利害関係だ。」などと殺伐な人間関係を構築していきました。

今回の場合、家族の前で気持ちを暴露されたショックが大きく。その方に恋こころを持ったことを最近まで忘れていました。
変化はこれから出てくると思われます。

過去の出来事や記憶とお別れすることによって、その方や出来事の記憶がなくなるわけではありません。
そこに付随していた不快な感情がなくなります。
いつも思い出すのでなく、その体験を通して人生の質を上げていくことができるようになります。

幸い日本には「ワビサビ」を感じる文化があります。
花や月を見て、感情を感じたり、四季の移ろいと共に感情を感じたり。
語り合うことで、悲しさ。虚しさを受け入れていく文化があります。

過去の悲しみを受け入れて消化していくことは、未来へ向かって生きていくための一つの準備になります。
大事なところは、悲しみを受け入れることと、好きだからこそ感じないようにしていた怒りを感じることです。

その際に失ったことへの「怒り」や失った未来へ対しての「ガッカリ感」なども
受け入れてみてください。
過去を過去として処理していくことができれば、その経験を生かして、昇華していくことができます。